PIC プログラミング道場・テスター編
Last updated 2002-05-23

4月6日(木)
 師匠より“PICのキット送ったからメというメールをいただいたので、早速ハンダごてを買いにホームセンターに出かけました。天気は折りしも雨、なにやら幸先の悪い感じです。しかし、こんなことで負けてはいられません。私は師匠とともにPICを使いこなす、と堅く決意したのですから。
 というわけで、雨の中、チャリをこぎこぎホームセンターにつきました。どこにあるんだハンダごて。おお、きっと“電動工具”のコーナーではないか?
 私の推測はあたりました(って、普通というか常識ですね)。
 しかしそこには大きな壁が立ちはだかっていたのでした。な、何でこんなにたくさんハンダごてがあるの?よくよく観察してみると、それぞれ種類が違うようですが、ハンダごてなど生まれてから29年間触ったことすらない私、いったい何が違うのかよくわかりません。そこでよーーーく見てみると、そこには2つのパラメーターがあるのでした。それはこて先とワット数です。
 しかし、こて先何ミリ、何十ワットとかかれても、いったいどれがPIC工作に適しているのか、さっぱり判らないわ。ああ、こんなことなら師匠に前もって相談しておくんだったノ。しかしこんなことでもやっぱり負けられません。わたしはハンダごてを買うためだけに雨の中をわざわざホームセンターにきたのですから。
 そこで、私は考えました。私は理系、しかもいやしくも研究職に就いている、いわば、屁理屈をこねまくることで飯を食っているのです。ここで一発、得意の屁理屈をこねてやろうでないか。そしてたどり着いた私の結論。
屁理屈その1:
こて先はハンダ付けする線の太さによって使い分けるものではないか。PICは小さい、と聞いている。しかも、ハンダごて使ったことない歴29年の私にはおそらく、こて先が細いほうが使いやすいのではないだろうか?
屁理屈その2:
昔習った公式(W=VIだっけ?)によればおそらく、ワット数が大きいほうが、早くハンダが溶けるのだろう。私はそんなに早く作業ができるわけではないし、太いハンダを使うわけでもないので、ワット数は気にする必要がないのではないか。
 そこでこて先4ミリ、30ワットのハンダごてを手にとりかけた瞬間、あることが頭をよぎりました。あんな熱いものを、作業中どうやって固定しておくんでしょう?アイロンのように立てられるわけでもないし、なにかに立てかけておくにしても、不安定なんじゃないでしょうか?
 そのとき目にとまったのが“初心者用ハンダごて、こて先3ミリ、30ワット(こて先固定台付)モです。しかもハンダもついています。もうこれしかありません。私は迷わずそのメ初心者用ハンダごて、(こて先固定台付)”に決めました。その間約30分。この先が思いやられますが、私は研究者、DNAだって切りまくりのつなげまくりなのよ。しかもピアノだって10年習ってたし、手先は器用なはず、と自分を励ましつつ、PICの到着を待つ私でした。
 これが、こて先固定台付つきハンダごてです。キュートでしょ。
 赤はわたくし、S嬢のテーマカラーなんです。赤い彗星って感
 じでなかなかでしょ。

S嬢のつ・ぶ・や・き☆

 こて先固定台においたこて子ちゃん。
 便利っすよほんと。

 実際ハンダ付けをしてみて判ったのですが、この“こて先固定台”は非常に便利です。もしこれからハンダごてを購入しようと思っておられる方は、こて先固定台付きを買うことをお勧めします。


4月7日(日)

 待ちに待ったPICが到着。どきどきしながら、梱包をといて行きました。また、師匠はえらく厳重にガムテープはりまくったなあ、と思いつつ、べりべりばりばり、テープをはがします。そしてついに、その瞬間が…。PICとのご対面です。
 えっ、これがPICちょっと拍子抜けした感じです。ごっつい基盤がずらーっとならんでいで、リード線がとぐろ巻いていて、というイメージだったのですが、実際は袋の中には小さい部品と説明書が入ったものが3つ。これがPIC君の正体でした。
 そうよね。だって、組み立てから自分でするんですもんね。基盤に線がもじゃもじゃだったら、それはもう完成品ってことですよね。わたしっておばかさん?
 しかし、それにしてもちびっこいです。基盤の大きさときたら、5インチフロッピーくらいしかありません。ほほー。これを私がハンダごてのこて子ちゃん(そう名づけました)とともに作り上げていくわけですね。
 そして箱の中には師匠からのメッセージが。「S嬢、自然発火しない範囲でがんばるのじゃ。精進すべし」。私は生まれたときから虚弱体質で毎日20錠ちかくの薬を飲んで体調を維持しています。無理をしたり、薬を飲み忘れたりすると倒れ、リゲインのんで24時間働いたりしちゃった日には、救急車ピーポーもの間違いなしです。秀逸なテクニカルライターであるとともに、また、優秀なM.D.Medical Doctor=医師)でもある師匠が、そんな私の体を気遣いつつも励ましてくださったのです。私は感涙にむせびつつそのメモをデスクの前に貼りました。
「自然発火しない範囲で精進する」この言葉を胸にPICマスターへの決意を新たにした私でした。

 PICってこんなにちびっこいんですよ。ちょっとしんじられます?
 8インチフロッピーよりもよゆーで小さいじゃないですか。
 しかも、これを私がつくると。ますますもってしんじられます??

S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 体が弱くてもできる、というのがなんといってもコンピューターワークの強みです。先日入院していた私ですが、病院にバイオC1を持ち込んでごそごそやってました。世の中の虚弱体質の人、私と一緒にPICやりませんか。きっとハッピーライフが待ちうけているにちがいありません。


4月9日(火)

 いざPICを作らん、と意気込んで、さっそく袋をあけてみます。ううむ、なぞの部品たちがたくさん…。とりあえず取説よ。だってキットだもの。取説をよめばすべて理解できるはず。
 そして、取説を開くと、“部品がすべてあるかどうかチェックしてください”という文章。ふむふむ。そんでその部品って?おーっとこれこれ、この部品表よ、これと対応させていけばいいのよ。U1半導体、R2抵抗、C1コンデンサ…。なにこれ、そんなこといわれたって、どれが半導体でどれが抵抗でどれがコンデンサなんだかわかるわけないじゃない。私は超初心者なのよ。
 この水色で2本足のタコのようなのは何?シマ模様のイモムシの串刺しは?黒いゲジゲジはいったいなんなの?

 イモムシの串刺しにゲジゲジに形態異常のタコ君
 なんすかこのヒトたちは?一般的にゲジゲジはICだ
 といわれますがこれは絶対に違うはず。だって、この
 ゲジゲジ君には考える場所がないじゃないですか。と
 にかく、なんなんだ、君たちはいったい??

 でもね、こんな私でもわかることもあるのよ。そう、トランジスタは3本足、これって世界の常識よね。ということは、トランジスタがこれ、ん、3本足のが2つあるーっ。四角いのと丸いの、いったいどっちが本物のトランジスタなの??

 私を悩ませる3本足コンビ。
 でも、色から考えると、青い方がさっきのタコ君の
 仲間のような・・・・・

 結局、部品はどれが何なのか、ひとつもわかりませんでした。ししょー(涙)。しかし、私と師匠の家の間には瀬戸内海というとても大きなカベがあるのです。手取り足取り教えてもらうわけにはいきません。
 あきらめるのはまだまだ早い。なんてったってキットなんだもの。取説を読み進めればきっと理解できるはず…。
 そんな私に追い討ちをかけるごとく、回路図が。なんじゃーこりゃー、ナスカの地上絵ですか?

 回路図ってこれっすよー。わからないですーこんなのー(涙)。
 この四角からいっぱいでている線はいったいなんなんですか?
 これが理解できる小学生様Or中坊君、私に講義してください。

 私には判りました。キットの取説だけではPICの組み立てが無理なことが…。
 しかしです、このような電子工作は、気のきいた小学生ならば簡単にこなしてしまうらしいではないですか。私が小学生以下だなんて…。大学に10年も在籍して、その間に費やしてきた時間とお金はいったいなんだったの?そして後に残された莫大な奨学金返済の借金は?
 冷静になるためにコーヒーブレイク。コナ・コーヒーを口に含みつつ考えました。いくら、灘高→東大→外務官僚コースを歩む超エリート小学生だって、公文式バリバリ、英語数学なんでもござれの超英才教育小学生だって、こんなキットをポンと手渡されて「作ってみ」と言われて作れるはずがありません(作れる人は人間ではありません。きっと宇宙人です)。数学には数学の、英語には英語の教科書があるように、世の中には電子工作のしかるべき教科書というものがあるはずです。
 というわけで、常識的日本人である私がとった行動は、そう、言わずもがな、本屋に行くことです。
S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 いやー。まいりました。PICをプレゼントしてくださった師匠ですが、本当にこれだけで作れると思っていたのでしょうか?ほんまに、なにがなんやらわからんかったです。わかったのはICくらいですか。一応パソコンにメモリさしたりするときに、パソコンの中に入っているチップとかを見ているので。もう授業についていけなくなった小学生の気分で、半泣きでした。


413(土)

さて、私は電子工作の教科書を買うべく、本屋へと向かったのですが…。ない。電子工作に関する本など置いてないのです。いまトレンドな本といえば、「各種資格試験対策本」、「旅行、アウトドアの本」、「お薬の本」などなど。あ、もちろんコンピューター関連の本もたくさんありました。『すぐわかるWindows』とか『すぐわかるWord』とか(パソコン買ったら自動的に入ってくるWindowsをこれ以上どうわかりやすくするというのでしょう。疑問です)。もちろんPICに関する本など、一冊たりともありませんでした。
 めぐりめぐって3軒目、ようやくありました。一冊だけ。『図解やさしくできる電子工作』という本です。なにやら古めかしい本ですが、選ぶ余地なし、買いました。
  今の子どもたちは受験に忙しくて、電子工作なんてお遊びをやっている暇なんてないのね、と感傷的な気分になってしまったのですが、それはそれとして、とにかく電子工作のお勉強です。
 ふむふむ。そうか、あの串刺しのイモムシは抵抗だったのね。しかもあの縞模様で抵抗の大きさが判るなんて、すばらしいシステムじゃないですか。ほう、あの形態異常のタコ君はコンデンサですか。角張った3本足がトランジスタですね。そんでもって、ハンダづけは基盤の裏側からやると。なるほどー。ためになりますね。
 必要な機材もだいたいそろいました。『やさしくできる〜』によればハンダごて、ニッパー、ラジオペンチ、ピンセットだそうですが、ハンダごては買ったし、ラジオペンチは小学生のときから使い込んだ年代ものがあります。ピンセットは某機関より拝借いたしました(借りたのよ。ちゃんとかえすんだから。念のため)。さて、足りないのはニッパーだけですが、これはラジオペンチで代用できるのではないか、ということで、一応このままPIC製作を発進しようかと思ってます。
 というわけで、出発進行!

 私の電子工作用具たち。 
 ものさしがダーティペアーなのに気づいたひと、えらいです。
 年がばれますね。

S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 『図解やさしくできる電子工作』はあればそれなりにいいかもしれませんが、かなりヘビーな(例えば自分で電解強度計をつくろう、とかゲルマニウムラジオを作ろうとか)電子工作の解説をしてある本で、PICの製作に関していえば、あまり必要ではないと、私は思います。が、一応紹介しておきます。

『図解やさしくできる電子工作』 谷腰欣司著 日本実業出版社


4月17(水)

 さて、PICの製作にとりかかろうかな、などと思ったのですが、私の心には一抹の不安が…。
 生まれてからこのかた電子工作など一度も経験のない私。中学、高校でも技術の授業は男子のみで、女子(一応ね、これでもわたくし女性なのよ)はその間パジャマ作りだの刺繍だの調理実習だのやらされていたわけです。
 もし、師匠からプレゼントしていただいたPIC様に何かあったらば、一大事。取り返しがつかないではないですか。アセンブラのマスター以前にことが終わってしまいます。
 ということで、菱沼さんのように大胆な私が(『動物のお医者さん』って漫画、御存知ですか?培養している大腸菌をファージで溶かしちゃったりするとても貴重な人です)、珍しくここは一つ慎重に。まず簡単なもので練習してみることにしました。試作品は西澤電機計器製作所製の組み立てテスターキットMODEL5220です。これは、私が教科書として購入した『図解やさしくできる電子工作』に紹介されていたものですが、主として学校の技術の教材として使われるものらしいです。電話注文したときに「お客様、個人で購入されるんですか?MODEL5220のことはどこでお知りになったんですか」と、かなり戸惑った様子でした。べつに私、怪しいものではないんですけど…。
 さてさて、このキットですが、さすが教材に使われるものだけあって、大変に丁寧。抵抗の大きさの読み方からハンダづけのやり方まで、とても詳細にわたって説明してありました。ただ、学校の教材だけあって、どれがどの抵抗かをいちいち計算しなければならないという、教育的な面もありました(これって、この世界では普通のことなんですか?)。

 MODEL5220です。なかなかシンプルで、組み立ても簡単そうなんですが、
 ところがどっこい、そうは問屋がおろしませんでした。

 師匠に「組み立てテスター作ります」とメールしたところ「うーん、いいんじゃないすか。でも30分くらいでできちゃうとおもうけど」という答えでしたが、実際は…。3時間かかりました。もしかしてわたしって、とろい…?
 まず、どれがどの抵抗かを判断するのに1時間。最初のうちはやたら時間がかかる上に計算を間違って、そんな抵抗ないよー、なんてこともあったりして、消去法などという禁じ手をやらかしたりしちゃいました。まあ、でも、慣れてくるとだんだん早く抵抗値が計算できるようになりましたけどね。人間って学習する動物なんだ、なんてしみじみ感じました。
 ところで、この説明書の傑作は、なんといっても抵抗の覚え方です。前回の日記にも書きましたが、抵抗は縞模様の色で抵抗値を判別します。例えば、黒は0を表し、覚え方は「黒い礼服」。このへんはふつうなんですが、青:6「青虫」、なにやら怪しい雰囲気です。灰色:8「ハイヤー」、いまどきハイヤーって単語、使う人いるんでしょうか?とにかく、このキットの説明書があれば、抵抗のカラーコードもばっちり覚えることができます。
 そして、ハンダづけ。こて子ちゃんをコンセントに差し込みます。さて、あたたまったかな、という頃、こて子ちゃんからケムリが…。このハンダごて壊れているんでしょうか?接触不良とかで、いきなり発火したり…。まあ、だいじょうぶよね。わたしはこて子ちゃんを信じてるわ。ということで(このへんに私の大胆さがにじみ出ています)、人生ではじめての、記念すべき初ハンダづけです。これは思ったよりも簡単にできました。なんだ、簡単じゃない、というなめた考えが、あとで恐ろしい結果となるのですが…。
 さて、続きは明日に。to be continued

 ハンダづけの終わった基盤。、シマシマの細
 長いのが抵抗です。
 基盤の裏側。銀色の点の部分がハンダづけを
 終わってリード線を切断した部分です。

S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 抵抗の読み方を解説いたします。

第1色帯 第2色帯 第3色帯 第4色帯 第5色帯
第1数字 第2数字 第3数字 乗数 許容差
    西澤流         S嬢流
 0 (黒い礼服)     (苦労した霊) 100
 1 (茶を一杯)     (チャリ1台) 101 ±1%

 2 (赤いニンジン)     (西日は赤い) 102 ±2%
 3 (第者)      (橙色のみかん) 103
 4 (黄色い信号)    (黄色い色素) 104
 5 (みどりご)     (ゴミ) 105 ±0.5%
 6 (青虫)       (ロッカーも真っ青) 106 ±0.25%
 7 (紫式部)      (村7分) 107 ±0.1%
 8 (ハイヤー)     (8杯) 108
 9 (ホワイトクリスマス )    (釧路) 109
10-1 ±5%
10-2 ±10%
無色 ±20%

S嬢流、ちょっと苦しいです。これでもない知恵をしぼって考えたんですけどね。まあ、テストがあるわけでもないので、覚える必要は特にないと思うんですが…。この表を見ながら抵抗を計算できれば、多分OKです。(って、師匠そのへんどうなんですか?)

● ハンダ付け後、余った線を切断するのはラジオペンチでもできますが、多分ニッパーのほうがやりやすいと思います。ラジオペンチだと、リード線が林立していると、大変切りにくいです。

● ハンダ付けをやっていくうちに、ハンダがハンダごてにこびりついてきます。そうすると、ハンダづけがやりにくくなるので、わたしはジュースの空缶になすりつけてとりました。普通どうするものなのかはよく知らないんですけど、とりあえず、燃えないものに擦り付けるのがいいのではないでしょうか。


4月18

 テスター作り後半です。
 ハンダづけもスムーズにこなし、ヒューズの部品をとりつけたりして、最後に本体のリード線を基盤にハンダづけして完成です。初めての私にしては、なかなかのできよね。
 説明書に書いてあるとおりにテスト。まず、抵抗計から。ツマミを1kΩにあわせてテスト棒の先端を触れ合わせてショートさせます。と、指針が右に触れます。ん、右ってどっちだっけ、お箸を持つ手よね。針が逆にうごいてるんすけど。

 針が逆に触れている写真です。矢印でしめしたのが針です。
 なんでやねん!

 私はない知恵をしぼりました。逆に動く、ということは、最後のリード線の接続が逆だったんじゃないでしょうか。でも、いくら説明書をみても、正しく接続されています。私は間違ってない。でもテスターは逆だと言ってる。ということで、リード線を逆につないで見ました。
 ちゃんと右に針がふれるやんけー。説明書、まちがってんでー。どないなっとんねん(関西在住なもので)とちょっと感情的になったりしたのですが、まあ、問題は解決できたのでよしとしましょう。
 そんな私に第二の問題が降りかかりました。ショートしたときに抵抗が0Ωになるように調整ツマミをまわして、調整する。ふむふむ。まわして調整、まわして調整…。ところが、まわしてもまわしても0にならないんです。おかしいなあ、ということで、基盤をはずしてチェック。

 テスター棒をショートさせた写真。
 今度は針が右に振り切れています。
 0Ω調整って、ほんとにできるの??

 このツマミのところのハンダづけがうまくいっていないのだろう、ということでハンダづけのやり直し。でも依然としてこの調整ツマミ君は機嫌を直してくれません。
 さて、このキットは学生実習用のものでした。というわけで、懇切丁寧に、抵抗計のみの回路図が書いてあります。そこでわたしは、その回路図上にあるすべての抵抗をハンダづけしなおしました。それでも、調整ツマミ君はうんともすんとも言ってくれません。
 この調整ツマミのことはおいておくとして、とにかく、抵抗が計れるのかどうかチェックしてみよう。私はPICのキットから100Ωの抵抗をとりだして計ってみました。測定値は115Ω。この抵抗の誤差がプラスマイナス5%なことを考えると(抵抗には誤差、というのがあるんです。精密機械には誤差の少ない抵抗を、どうでもいい機械には誤差の大きい抵抗を使うんです。皆さん御存知でした?)、ちょっち大きめかな。でもまあ、0Ω調整はできないけど、可としよう。そんなわけで、わりにいいかげんな抵抗計完成です。
 ちなみに、別の100Ωの抵抗を測ってみると、今度は90Ωでした。抵抗の誤差も結構あるんじゃないの、ということで、こんなのは御愛嬌よね。
 あとは、電池を持ってきて電圧と電流のチェック。こっちはOKです。やっぱりあの調整ツマミがなにかおかしいのだろう、と思うのですが、私が考え付くありとあらゆることをやっても解決できないので、きっと0Ω調整用ボリュームの部品が壊れていたのよ、ということにしときました。まあ、大体の抵抗がわかる抵抗計、ということでいいじゃないですか。

 電池を測った値です。大体1.5Vをさしています。
 電圧計はOKなようです。

 はじめての作品にしては、よくがんばった。感動した。(小泉節)
 ともかく、怒涛の3時間でした。はたして、PICはうまく作れるのでしょうか?不安でたまりません。
師匠、こんな弟子ですが見捨てないでください。

S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 キットだからできるのは当たり前なんですが、それでも、一応、形になるとうれしいものです。PICを作る前にテスターを作ったことは、いろいろな意味でプラスになったと思います。ハンダ付けの練習になったし、抵抗の計算もスムーズに(とはいっても、師匠に比べたらカメのようにとろいですけどね)できるようになったし。
 もし電子工作未経験でPIC組み立てに挑戦しよう、という方がいらっしゃったら、いちどテスターなりなんなりで練習してみるのがいいと、私は思います。


4月24

師匠より、「かりにもPICをマスターしようと志しているものが、こんないいかげんなことでどうする。抵抗計問題とリード線逆問題をはっきりさせなさい」とのお言葉を頂戴しました。確かにそのとおりです。それに、この日記が公開されると、もし仮に私が配線やハンダ付けをミスしたために例の問題が起こっていたのだとすれば、会社に迷惑がかかってしまいます。
 ということで、問題解決のために西澤電気計器製作所に電話をかけることにしました。「もしもし、私、先日、個人でMODEL5220を購入した者なんですけれども…」ちょっとナーバスな私。個人購入する、というだけであれだけ怪しまれたのです。今度は配線について質問したいと、しかも若い(一応20代です。ぎりぎりとはいえ、一応ね)女性の声で。会社側からしてみれば、「なんじゃこいつ」と思って当然です。
 しかし、そんなことでめげてはいられません。担当者に取り次いでくれ、と頼むと、電話受付嬢は、戸惑った声で「少々お待ちください。おつなぎします」。相手の動揺が電話線を介して伝わってきました。こちらもどきどきします。
 ぴろぴろり〜。電話保留音が止まって「もしもし」。やさしいおじさんの声です。以下会話のやりとり。
私:あのー、MODEL5220の配線について…
おじさん:あー。先日、個人で購入された方ですね。
私:はい(社内中に知れわたってるのね、私のこと)。ちょっとおかしいところがあって、お聞きしたいんですけど、配線についてなんですけど。
おじさん:はあ。
私:最後に基盤にリード線をハンダ付けしますよね。そのリード線のプラスマイナスが逆なんですけど。
おじさん:えーっと、それは、説明書の18ページのことですか?
私:はい。
おじさん:これは、白黒なのでわかりにくいかもしれませんが、黒い線が赤で、白い線が黒なんですけど。
私:はい、それはわかります。それで、18ページのとおりにハンダ付けしたんですが…。
おじさん:そうだとすれば、説明書は一括で印刷しているので間違いはないはずです。こちらでリード線をつけるときに赤と黒を逆につけ間違えたんですね、おそらく。
私:あ、そうですか。あの、それでですね、抵抗計の0点調整ができないんですけど。
おじさん:えーと、あのー、0Ω調整のことですか?
私:そうです、そうです。
おじさん:うーん。そうですねー。回路のハンダ付けがどこかおかしいのかもしれませんねえ。
私:私もそうじゃないかと思って、抵抗計の回路のすべての抵抗をハンダ付けしなおしたんですけど…。
おじさん:調整ツマミのハンダ付けですが、3点ハンダ付けするところがあると思うんですがね、それがつながってしまったらだめなんですがねー。
私:(しばし、基盤を見つめて確認)えーと、ちゃんと独立になってるんですけど。

 調整ツマミのハンダづけ。この3つがつながってはいけなかったらしい。 
 でも、ちゃんと独立にハンダづけできてまっせ。

おじさん:ダイオードの極性は正しいですか?まあ、これを間違うと回路自体が動かないから、今回の場合、多分大丈夫だと思うんですけど。
私:ダイオード、ダイオード。えーっと、これって15ページのとおりでいいんですよね。正しいと思います。
おじさん:うーん。それで、0Ω調整だけができないと。ほかはどうなんですか?
私:電流計も動きますし、電圧計も電池を計ると1.5Vを示すので、多分いいと思うんですが。それでですね、抵抗も測ってみたら測れることは測れるんですよ。100Ωの抵抗を測ったらだいたい110Ω位だったんですけど。
おじさん:うーん。じゃあ、抵抗計は動いているけど、0Ω調整だけができないと。
私:0Ω調整ができないとまずいんですか?だいたいの抵抗の値ははかれるということでは…。
おじさん:でもねー。やっぱり抵抗を測定する前に調整してから測らないと正しい値がでないですからねー。なんなら、基盤をこちらに送っていただいたら、どこがおかしいかチェックさせてもらいますけど。
私:そうですか。では、もう一度考えてみて、それでもわからないようなら、そうさせてもらいます。

 以上電話のやりとりでした。なんてやさしいおじさんなんでしょう。すこし、なまりがあるところが(会社は長野県にあります)なかなかのポイントです。

 さて、それにしても、0Ω調整ができないのはなぜ?基盤を製造元に送って、みてもらうにしても、とにかく確認してからじゃないと。というわけで、説明書とにらめっこして、基盤におかしいところがないかをくまなくチェックしました。
 ありました。間違えていた個所が。そうです、例の最後のリード線接続のところです。それまでの説明書の図はすべて電池の入る場所が上になるように書いてあったんですが、リード線接続の個所だけ説明図が横にかいてあったんです。そのために、リード線を基盤にハンダ付けする場所を間違えていた、と言うわけです。よくいるでしょう、方向音痴で、地図を見るときに道路の走っている方向にむけて地図を回して見ないとわからない人が。わたしもそのたちです。つまり、図の方向が違ったので、リード線を接続する場所を正しく認識できていなかったというわけです。

 最後のリード線の接続。白の矢頭で示した部分が正しい個所。 
 S嬢は黄色の矢頭で示した部分に接続していたために、0Ω調
 整ができなかった。

 そこで、あらためて正しい場所に、こんどは赤の線と黒の線を説明書のとおりにハンダ付けしてみました。そうしたら、きちんと針が右に触れる上に、できるじゃないのー、0Ω調整が。
 というわけで、西澤電気計器製作所さんはなにも悪くありませんでした。数々の罵詈雑言お許しください。しかも、なんて丁寧な対応。できない、という電話をかけたら、「みてあげるので、基盤を送ってください」とまでいってくださるとは。西澤電気計器製作所さんは、本当に親切でいい会社です。しかもMODEL5220は説明書も丁寧でわかりやすく、初心者にはもってこいの教材です。ただし、方向オンチの人は要注意です。(これって私だけかも(笑))
S嬢のつ・ぶ・や・き☆
 ポイントは、ダイオードには極性がある、ということです。これは、今後のPIC製作にも大きくかかわってくるだろう問題だと思うので、皆様おわすれなく。ダイオードを逆にハンダづけしてしまったら回路はまったく動きません。

 これがダイオードです。ダイオードの白の帯の位置で極性が
 わかると言うわけです。すばらしいシステムですねー。

 やはり今回の教訓は、判らなかったり、あいまいだったりしたところをそのまま放置するのではなく、きちんと解決すべきだ、ということです。何事も一歩一歩の積み重ねからですね。いや、ほんとに。
 西澤電機計器製作所の連絡先を記します。ホームページのリンクを、と思ったのですが、残念ながらまだホームページがないので、MODEL5220を注文したい方は、電話して私のように不審がられてください。
 西澤電機計器製作所 tel:0268-82-2900